人と住まいへの被害の影響とそれぞれの習性。そして、自然素材「ホウ酸」による対策
住まいと人のくらしにダメージを及ぼす木材劣化生物たち。
シロアリ・腐朽菌・カビ・キクイムシ
日本では現在20種類を超えるシロアリが確認されています。ここでは特に木造の建物に大きな被害を与える4種についてご紹介します。
地下シロアリ:(ミゾガシラシロアリ属)ヤマトシロアリ・イエシロアリ
シロアリの代表的な種類は、日本全土にみられるヤマトシロアリ、比較的関東以西の暖かい地域に生息するイエシロアリです。これらは、地下を移動しながら樹木などに含まれるセルロースを加害するので「地下シロアリ」と呼ばれています。
ヤマトシロアリは、地中を移動し、土中や木材の加害箇所が巣となります。
多湿なところを好み、一般家屋では台所、風呂場などの水場周りに被害が多く見られます。
羽アリは4〜5月の雨の日の翌日、晴れた日のお昼前あたりから飛ぶことが多いです。
一斉に群れてたくさん飛び立つので、これを群飛といいます。
イエシロアリは、地中や建築物の中などに塊状の巣を作り、水を運ぶ能力長けているので比較的乾いた木材まで移動して食害することができます。巣(コロニー)は大きな物では100万頭に達する巨大なものとなり、活発で破壊力も強く、住宅への被害は数週間で強度に影響が出るほど甚大になります。
6〜7月の風の無い夕方から夜にかけて、数千〜数万の羽アリがいっせいに飛び立ち(群飛)、電灯などに集まります。
シロアリは、本当は蟻じゃない!?
道でよく見かけるクロアリの先祖は蜂の仲間、そしてなんと!シロアリの先祖は・・・ゴキブリの仲間!です。
よくよく観察すると、その特徴の違いがはっきりと見て取ることができます。名前から誤解をしやすいですが、シロアリは英語ではTermite
(ターマイト)。違う種類と意識していることがよくわかります。
また、シロアリやゴキブリは幼虫から成虫までに外形の大きな変化がなく、成長にしたがい色や大きさがかわります(*)。これを不完全変態といいます。
アリやハチは完全変態といい、幼虫からさなぎ、成虫へと変化します。
*シロアリは成長や役割によって「職蟻(擬職蟻)兵蟻・ニンフ・有翅虫(羽アリ)・王・女王」の変化が出ます。
乾材シロアリ:(レイビシロアリ属)アメリカカンザイシロアリ・ダイコクシロアリ
日本では主に、小笠原・奄美以南に生息するダイコクシロアリと、本州でも点在して見られるアメリカカンザイシロアリが生息しています。
最近特に多いのはアメリカカンザイシロアリによる被害です。
アメリカカンザイシロアリは外来種で、発祥はアメリカのカリフォルニア州。輸入建材や輸入家具などの木工品に潜み、他のエリアに広がっていったといいます。
日本では1976年に初めて発見され、現在では日本全国に広まっていると考えられています。
土中に巣を持たず、乾燥した材木から材木へと巣を作り被害を広げるので乾材シロアリ。
乾燥材を加害し、家屋の屋根裏、窓枠や柱、畳、時には家具からも発生します。
加害材の孔から、乾燥した俵状のスジの入った砂粒状の糞を排出します。
地下シロアリと違い、乾燥材にほんのわずか含まれる水分だけで生きることが出来るので、蟻道を作らず加害場所が巣を兼ねます。
そこから羽アリとなって飛び立つので被害は家全体に広がり、巣をたくさん作られるので駆除は困難を極めます。
羽アリの群飛は、6〜9月に小規模ずつ何回も発生し続けることが多いですが、暖房している室内では羽アリが1年中発生する事があります。
木材腐朽菌:キノコ
木材を腐らせる菌類の総称。
大きくは、白色腐朽菌と褐色腐朽菌の2種類に分けられ、どちらも木材を分解します。(腐れ)
白色腐朽菌はサクラやケヤキ、ブナなどの広葉樹を好み、木材中のリグニンを分解する能力を持ち、白色のセルロース、ヘミセルロースを残し、木材を白く変色させることから、白色腐朽菌と呼ばれます。
普段食用としているシイタケやナメコなど「○○タケ」の食用キノコ類は白色腐朽菌に含まれます。
白色腐朽菌は、褐色腐朽菌に比べ寒さや直射日光に強く、乾湿の繰り返しの激しいところや寒暖差の大きなところなど環境の変化が激しいところでも生育するものが多いです。
褐色腐朽菌(かっしょくふきゅうきん)はマツやスギなどの針葉樹を好み、セルロースやヘミセルロースなどを分解して、褐色のリグニンを残し、木材を褐色・黒色に変色させることから、褐色腐朽菌と呼ばれます。
褐色腐朽菌は多湿で風通しや日当たりの悪いところを好みセルロースを酵素的に分解し、最終的に水を作ります。それにより木材水分を調整して、繁殖条件を整えています。
カビ
「温度・湿気・養分」と三つ揃うと発生するカビも腐朽菌も菌の仲間で、ジメジメとした床下や、結露の発生しやすい環境になってしまっている壁の中などによく見られます。
カビが腐朽菌と違うのは、カビは木の表面に発生はしますが、木材を分解しないこと。
梅雨の時期の食べ物や、日当たりの悪い湿気の多い箇所にわいているのをよく見ます。
換気の悪いお風呂もカビの発生の好条件が揃っています。
しかしカビのいちばんやっかいなのは、人の健康を害すること。
代表的なのは、シックハウス症候群とよばれ、カビが飛散させた胞子を吸い込むことにより、個人差は大きいですが、目の痛み・不快感、鼻水、喉への炎症、吐き気、湿疹、頭痛、だるさ、呼吸困難など、アレルギーになるほか、場合により重篤な症状を人体に及ぼします。
カビは普段目にしない床下や壁の中で増殖を続けるため、屋内にいるとなんとなく体調がすぐれないなど、原因として特定しづらいことがあります。
キクイムシ:ヒラタキクイムシ
キクイムシの体長は2~8mmほどと個体差は大きく、色は暗褐色で、体型は細長く平たい。
建築時の被害材の使用、被害家具の持ち込みなどにより家屋に侵入して、床、柱、壁、下地材などの建材や家具を食害します。
木材の内部の導管とよばれる木の養分の通り道に産みつけられた卵が孵化し、幼虫が木材内を食害します。蛹を経て、成虫になり、毎年4~8月ごろ、成虫が被害を与えていた木材から飛び出します。
そのとき、鉛筆で刺したような脱出穴を開け、そこからきな粉のような木くずと糞がこぼれ出ます。
脱出した成虫は交尾し、また導管に産卵します。
このように、ヒラタキクイムシは一度出てしまうとなかなか止めることができません。それはアメリカカンザイシロアリの被害と似ています。
被害は導管のある広葉樹材と竹材に限られ、針葉樹材は被害にあいません。
住宅の骨組みである構造材のヒノキ・スギは針葉樹。堅さのある広葉樹は家具やフローリングなどに使われます。
シロアリの本当の役目。地球にとっての『益虫』
シロアリが・・・??木材住宅の大害虫が生態系を支えている?!
家屋に被害を及ぼすシロアリ。人にとっては厄介ですが、実は、環境にとってはとても重要な生物です。
分解者・シロアリ
木材(樹木の幹)は主に「セルロース」という炭水化物でできています。「二酸化炭素の缶づめ」と言われるほど、地球上で最も多い炭水化物で、人の生活の身近にあり、「紙」もセルロースです。
セルロースには糖分が含まれていて、栄養価も高い。
しかし、とても分解しづらい物質で、人間を含む多くの生物はセルロースを消化することができません。これを分解し、栄養とできるのがシロアリ(*)やキノコなどの木材劣化生物です。このように、シロアリはセルロースをほぼ独占することができ、繁栄を続けてきたのです。
*正確にはシロアリの体内にすむ共生生物が分解し、シロアリへの栄養に変えています。
シロアリがでない地域
コーヒーにはコーヒーベルトといい、赤道付近の北回帰線と南回帰線との間で生産が盛んな地域があります。シロアリも似たように生息できる地域が決まっていて、寒冷地には生息できません。
国内でも北海道はもともとシロアリの生息がない、とされていましたが、住宅性能の向上によって気密性が高まり、建物があまり冷えなくなり、人にとって暖かく快適な環境は、シロアリの生存率も高めました。
比較的全国でみられたヤマトシロアリのみでなく、暖かい地域でしか生息できなかったイエシロアリも年々北上し、北関東などでも被害が報告されています。
暖かいエリアを好むシロアリほど、家屋への被害が甚大で、駆除にとても手間がかかります。
動物性たんぱく質・シロアリ
そんなシロアリの天敵は、クロアリです。
分解困難なセルロースをシロアリが食べ、そのシロアリをクロアリが食べる。つまり、クロアリはシロアリを食べることによって、セルロースを間接的に食糧にできているのです。
食物連鎖のスタートです。
このように、シロアリは、分解困難なセルロースを動物性たんぱく質に変換しています。生態系から見ればとても重要な生きものなのです。
益虫? 害虫?
シロアリは木造住宅にとって大害虫です。
しかし、生態系を底辺でささえる大益虫でもあります。
そして「どこにでもいる」ということも知っておきましょう。
街を歩いていても、たとえば立木をささえる杭の割れ目に、ころがっている丸太の下に、枯れ木に、切り株に。
寄せ付けない工夫を
シロアリは寒さに弱いですが、冬眠できません。寒い冬でも弱々しくも活動しています。
地中に埋設されたケーブルの被膜をかじってしまうのも、暖かいからなのでしょう。
そんなどこにでもいるシロアリが寒い中、エサを探しています。
すると暖かい場所に行き当たりました。排水枡でした。きっとお湯を使っているのでしょう。そこから続く暖かい配管沿いに伝って行きます。基礎にたどり着きました。そこに断熱材でもあればしめしめです。
シロアリが寄りづらい、入りづらいご提案ができます。お気軽にご相談ください。